2024/06/11  
ケーブルを選ぶうえで2番目に見るべきこと

私がケーブルを選ぶ時、単線/撚線の次に2番目に見るもの。それは構造でしょうか。スペック見ればわかる項目で、かつ音への影響力もかなり高い。

では優れた構造とはどういったものでしょうか?当然電気信号に影響を与えないもの。ということになりますが、言い換えると信号にノイズを付加しないものが優れた構造です。「電気信号に影響を与えない」・・・自分で言ってなんですが、言葉にすればすごく真っ当なことを言ってますね。

では、ローノイズなケーブルはどのように作るべきでしょうか?
シールドを厳重にしたりスターカッド構造にすれば、ノイズ対策は万全でしょうか? 素人相手にアピールする製品群ではここで終わりですが、これでは全然不十分なのです。外部からのノイズの混入はもちろんですが、ケーブル自体の発するノイズも気にかけるべきです。例えば撚線の接触面で生じるノイズもケーブル自体の発するノイズと言えますし、広義には抵抗による電圧降下やインダクタンスによる電圧降下も、ケーブルの発する電界で信号が減衰したと言えるので、ノイズととらえることができます。


ケーブル自体がノイズを発する。言い換えると部品自体がノイズを発する。この視点がないとオーディオは良いものを作ることはできません。


スピーカーだと振動板を駆動した時ノイズが少ないものを選ぶ必要がありますし、アンプを構成する部品もノイズが少ないものを選ぶ必要があります。また、部品自体も最小構成で作るべきです。ノイズ対策も対策部品がノイズを発することを認識してきちんと吟味して対策するべきでしょう。フィルター部品を大量に突っ込んだだけで「ノイズ対策しました!だから高音質です!」で押し切るメーカーもありますから、「ノイズ対策しました!」「ノイズ対策しました!」「ノイズ対策しました!」とアホみたいに連呼するメーカーは注意したほうが良いでしょう。フィードバック大量にかけて「超高特性です!だから高音質です!」と言っている素人騙しメーカーと同じです。少なくともそのノイズ対策が安易なものであるのか見極める必要があるでしょう。音質を劇的に上げるには発生したノイズをフィルターで減衰させるだけでなく、大本から発生させない根源対策が必要になります。実際にそれが出来ているの?ということです。


例えばPMA-1600NE。「ノイズ対策しました!」と連呼してたDAC積んでたけど、そのくせ音質は大したことない。1万のサウンドカードに毛が生えたレベル。「ノイズ対策しました!」とアピールしてあの程度の音しか出せないのは何なんでしょうね。あと、電源線にフェライトコアが付けてあったけど、あれって付けると解像度や定位は良くなるけど、付けすぎると音が氏ぬ。音色が悪くなる。デメリットに気づくと付ける気はなくなる。そこも気に入らないポイントだった。
一番最悪なのは、DACを稼働させていると電源ケーブルでほとんど音質向上しなくなること。pureモードにしてDACへの電源供給を止めるとちゃんと音質向上する。これ絶対「ノイズ対策しました!」のDAC基盤のノイズが悪さしてるよね? CXA80のDACではそんなことなかったし、ノイズ対策と称してぶち込んだ部品が悪さしてるんじゃないの? 「ノイズ対策」「ノイズ対策」言ってるけどちゃんと音を確認して製品開発したのかな? 消費者にアピールするためだけの無意味なノイズ対策になってませんか? 本当の意味でローノイズ化できているならもっともっと良い音が出ているはずですよ。
話がそれてしまいましたが、PMA-1600NEは「部品自体がノイズを発する」という視点で開発されたものではなかったなと。


話を戻して、ケーブルでノイズが発生するポイントはどこかというと、シールド、導体、撚線の接触面、絶縁体、最外層ジャケット、収縮チューブ、近接した導体からのクロストーク、近接効果、近接効果による振動、表皮効果、インダクタンス、外来ノイズなどです。素材レベルで言うと、構成している部品全てが影響するというレベルです。

特にシールドは外来ノイズの遮断という意味では優れていますが、同時に信号への悪影響が大きいです。電気信号は導体の外側を通りますから、シールドの表面も這って行きます。なので表面形状の影響をもろに受けます。しかも表面積が大きいのでその影響力は導体よりも遥かにでかい。パイプシールドにすれば理想的ですが、パイプにしてもなお、結晶構造の影響や電流ノイズの問題からは完全に逃れられません。
シールドを被せれば、外来ノイズの影響は無くせますが、同時にシールドの発するノイズを受け入れる必要があります。シールドの発するノイズを如何に減らすかがシールドケーブルの高音質化の鍵となります。と言ってもこれがかなり難しい。正直市販品で私が感心するシールドの張り方しているメーカー1個もないです。
特にメーカー製のケーブルで良くないなと思うのは、まず、編組シールド。「あのボコボコの表面に信号這わせるの?どういう感覚してたらそれ許容できるの?何も考えてないからそういうことができるんだろうな。」と思います。それから遮蔽率の高さを謳った2重シールド。箔の外側に編組シールドを巻いたやつね。確かに内側は箔なので、編組と比べると内側表面は滑らかです。ですが、外に巻いた編組シールドが厄介で、電流路が大量にあると電流ノイズが発生しやすいので音質面では良い結果を得られません。同じく箔シールド+ドレイン線も電流ノイズの温床になります。箔シールドのみドレイン線なしで、アースへの接続は何かしらの加工をして行うのが最適解でしょう。

教科書通りなら、シールドのような導電体上は等電位になるから何も起きないということになっているのですが、あくまでそれは長い時間間隔での話で、短い時間間隔で言うなら、実際はシールド上を電位差も生じるし、その電位を電子が感じて電流が走ります。「電流が電位差を解消するように流れるから問題ない」と思いがちですが、まず電位差が生じないことには電流は走れません。つまり短い時間であれ電位差は必ず生じるということです。そして、その電位差を感じで電子が動くわけですが、電流が走ると、結晶構造の傾きや結晶同士の隙間を通ることで電流由来のノイズが発生しますし、電流路が長い経路を通るとそれだけ電流ノイズが発生しやすくなります。

またシールド表面で電位差が生じるということは、撚り線単線の時と同様、シールドの表面形状の影響を受けてさらに電界由来のノイズが発生します。さらにさらに、シールド上の電位差はシールドの外を覆っている被膜のダイポールも回すので被膜由来のノイズも発生します。つまりシールドで覆っていても、その外にある最外装のジャケットの影響も完全になくすことはできないということです。ただしシールドしていると最外装ジャケットの影響は少し軽くなります。なのでシールドの効果がないわけではありませんが、過信するほど万能ではない。

シールドで覆うと外界の影響を完全にシャットアウトできると思いがちですが、実際はそんなことないのです。こう考えるとシールドって完璧ではないし、ノイズの温床だし、ケーブルにおいては扱いが難しいものの一つだと思います。

シールド実装については他にも気を付けるポイントはあるのですが、上にあげてる程度すら実行できているメーカーがありません。
そんなこと言い始めると買うものがないので、市販品で選ぶ時は

・編組シールドは避ける。(表面形状がクソだから)
・箔シールド+編組シールドは避ける。
・箔シールド+ドレイン線で妥協する。
もしくは
・横巻シールドで妥協する。
・そもそもシールドされたケーブル自体を避ける。

というようにしています。


と、一般的な構造の話をするつもりだったのが、話が逸れてシールドの話になってしまいました。次回は市販ケーブルの構造のメリットデメリットをお話ししましょう。